災害ユートピア - なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか / レベッカ・ソルニット(著) 高月園子(訳)
災害ユートピア――なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)
- 作者: レベッカ・ソルニット,高月園子
- 出版社/メーカー: 亜紀書房
- 発売日: 2010/12/17
- メディア: 単行本
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これもまた、随分前に読んで、放置していたのですが、取りあえずアップ。
原題は"A PARADISE BUILT IN HELL - The Extraordinary Communities That Araise in Disaster"で、地獄の中の楽園という感じですかね。
何故、災害のような危機的状況の中で特別の共同体が立ち上がるのか、そしてどうやってそれが解体されていくのかが記されています。
まず、常識が間違ってる話として、
- 実際の災害発生時には集団心理、集団パニックと言った話はほとんど聞かれない。
- それはマスコミ・施政者によって引き起こされる幻想で、それにより災害の被害が増大する(それによって人種差別が噴出する場合もある ハリケーンカトリーナの時のニューオリンズの自警団の話など)
- 災害時は利他的にふるまう人々がたくさんおり、そしてそのことに喜びを感じている
ことがあげられています。
3/11以降、被災者の姿を見て日本人は素晴らしいという話がたくさんありましたが、実は危機的な状況では人が利他主義によるのは一般的であるということになります。
そして、
- 官僚機構は本質的に災害の緊急のニーズへの対応が苦手であること(官僚たちはその場に応じた迅速で柔軟な対応ができないため、市民のプライオリティと相反する)
- 官僚機構による災害への対応をコントロールすることは無理であり、唯一有効な方策は、市民にある程度の主導権を与えることが必要である
と述べられています。
だからこそ、災害時は利他的なコミュニティが立ち上がり、収束していくに従ってコミュニティは解体されていくと。
結局、官僚機構が「市民社会を役所の構想に織り込む術を持たない」が問題なのかと思いますが、なかなか難しいですね。