「日本の原子力施設全データ」を一部無償公開
日本の原子力施設全データ―どこに何があり、何をしているのか (ブルーバックス)
- 作者: 北村行孝,三島勇
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/09/20
- メディア: 新書
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ブルーバックス | 講談社ということで、ブルーバックス出版部(講談社)と著者の方々の粋な計らいで一部がPDFで無償公開されたので、公開部分を読んでみました。
第一部に関しては最近仕入れた原発知識のまとめみたいな感じで、残りの公開部分は原発の安全対策と主要な原発事故についてでした。分かりやすくて良いと思います。
書籍の残り部分は入手したら読んでみたいと思いますが、原発に関わる企業/官僚の隠蔽体質とか、安全に対する意識の低さは変わってない感じがします。どうにかならないのかなぁ。
以下メモ。
運転体制 一原子炉毎に六班三交替制 四班 三交替制の当直勤務 早朝〜 一直 午後〜 二直 夜〜 三直 二班 日勤勤務 一班 日勤班 一般 訓練班 一般辺り5〜6人 当直長(運転責任者) 当番副長 運転員 運転補助員 分類 原子炉 ├ 実験炉 ├ 研究炉 ├ プルトニウム生産炉 ├ 動力炉 | ├ 発電炉 | └ 舶用炉 … ─┬ 熱中性子炉(Termal Neutron Reactor) | ├ 軽水炉(LWR: Light Water Reactor) | | ├ 加圧水型炉(PWR: Pressurized Water Reactor) | | └ 沸騰水型炉(BWR: Boiling Water Reactor) | ├ 重水炉(HWR: Heavy Water Reactor) | | └ カナダ型炉(CANDU: Canadian Deuterium Uranium Reactor) | └ 黒鉛炉 | ├ コルダーホール型炉 | ├ 改良コルダーホール型炉 | ├ 高温ガス炉 | └ ロシア型黒鉛炉(RBMK型炉) └ 高速炉(FR: Fast Reactor) └ 高速増殖炉(FBR: Fast Breeder Reactor) 発電用原子炉の構造 日本で最も一般的な100万キロワット級の軽水炉の場合 発電所 1万〜2万平方メートル 原子炉建屋 高さ80m 原子炉格納容器 (沸騰水型炉の場合、厚さ3cm程の鋼鉄板) 原子炉圧力容器 (福島第二原子力発電所2号機の場合 高さ約22m, 内径約4.4m, 肉厚約22cm) 燃料棒 制御棒(加圧水型炉は上から燃料集合体の間に降ろす, 沸騰水型炉の場合は下から上に挿入する方式) ジェットポンプ(沸騰水型炉の場合) … タービン建屋, 補助建屋 発電機 コントロール建屋 燃料は燃料棒を束ねた燃料集合体 運転時の圧力 沸騰水型炉 約70気圧, 280〜290度 加圧水型炉 約160気圧, 290〜330度 安全システム 異常発生防止(自己に繋がりかねないようなトラブルの発生を事前に防止する仕組み) 事故の発生・拡大防止(異常の早期検出装置と原子炉自動停止システムの設置) 放射性物質の周辺への防止(事故発生時は原子炉格納容器で放射性物質を閉じ込める) 止める・冷やす・閉じ込める 設計段階で想定される典型的な事故 冷却材喪失事故 反応度事故 原子炉自動停止システム 非常用炉心冷却システム(ECCS: Emergency Core Cooling System) 止める スクラム 原子炉が安全停止装置などによって止まること 冷やす 低圧注入系 高圧注入系 格納容器スプレイ系 閉じ込める 格納容器の気密性 原子力基本法 原子力の研究や開発、利用は民主・自主・公開の三原則のもと、平和の目的に限り、安全を旨として行う 原子炉等規制法 放射線障害防止法 原子力災害対策特別措置法 原子力損害賠償法 電源三法 電源開発促進税法, 電源開発促進対策特別会計法, 発電用施設周辺地域整備法 ウラン資源 岩石+海水中 総領40億トン。ただし現状では安価に回収する手法がないため、鉱石から分離、加工 世界のウラン資源 400万トンの可採埋蔵量と推定されているが、1kg/80ドル以内で採掘出来なければ経済的に引き合わないため、埋蔵資源量は約310万トンと推定されている 世界の年間ウラン需要量 5万トン→約60年分の資源量 世界のウラン資源の分布 オーストラリア, カザフスタン, カナダ, アメリカ, 南アフリカが恵まれている ウラン鉱石から燃料への加工 製錬 → 転換 → 濃縮 → 再転換 → 成型加工 製錬 ウラン鉱石に化学処理をしてウランを取り出す(イエローケーキ) 転換 イエローケーキ+フッ素ガス→六フッ化ウラン(気体状にする) 濃縮 ガス拡散法, 遠心分離法(主流), 原子レーザー法, 分子レーザー法 六ヶ所村 再転換 六フッ化ウラン→粉末状の二酸化ウラン JCO 成型加工 二酸化ウラン→ペレットにして1700度以上の高温で焼き固められる。これをジルコニウム合金の管に密封→燃料棒(軽水炉の場合長さ4m位, 1本辺り300個超のペレットがおさまっている)→正方形に数十本束ねる→燃料集合体 3〜4年程燃やすとウラン235の濃度が3〜5%→1%まで低下し、燃料としての役割を終える プルトニウム 燃料中のウラン238(90%以上)が中性子を吸収してプルトニウム239に変わる これを燃料として再利用する体系→核燃料サイクル 使用済み燃料からプルトニウムと燃え残りウランを取り出す→再処理工程 プルトニウム燃料を効率よく燃やして使った以上のプルトニウムを生み出す→高速増殖炉 廃棄物としてそのまま処理→ワンス・スルー方式 再処理工場 高速増殖炉 新型転換炉(ATR: Advanced Thermal Reactor) プルサーマル 軽水炉でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を燃やすこと 放射性廃棄物の処理・処分 低レベル放射性廃棄物 セメントやアスファルト等で固められ鋼鉄製のドラム缶に詰められ、近10メートル程度の比較的浅い地中に埋められる 高レベル放射性廃棄物 ガラスにとかしこんでステンレスの容器に密閉する(ガラス固化体)。崩壊熱で高温になるため、地上で30〜50年冷やした後、数百メートルの深い地下に埋設処分する(ことになっている。実際に埋設処分をはじめた国はまだない) 放射線の種類 アルファ線 ヘリウムの原子核。正の電化を帯び、透過力が弱い。(紙一枚で防げる) ベータ線 電子。負の電荷を帯び、透過力が弱い。(アルミ箔で防げる) ガンマ線 電磁波の一種。電気的には中性で、透過力は強い。(かなりの厚さの鉛板等でないと防げない) 中性子線 透過力が最も強く、分厚いコンクリートや水でないと防げない 放射能 放射線を出す能力。単位はベクレル(Bq)を使用する。(以前はキュリー(Ci)が使われていた) 線量当量 放射線によって人体などが受ける影響を表現するのに使われる。単位はシーベルト(Sv) 被曝(≠被爆) 内部被曝と外部被曝 放射能の単位 1ベクレルBq(/s) 1秒間に1個の放射線粒子を発射する能力 放射線の量に関する単位 吸収線量 1グレイGy 1kgあたり1ジュールのエネルギー吸収がある時の占領 実効線量等量 1シーベルトSv グレイに生物学的効果比をかけたもの 吸収線量が同じでも放射線の種類や性質によって障害の程度がかなり異なるため、実態を勘案して吸収線量を補正し、同じ障害を与える線量が定められた→シーベルト 放射線の危険性 急性障害 晩発制渉外 20mSv以下 目立った症状はない 500mSv程度 白血球の一時的な減少 1Sv以上 吐き気、脱毛等の症状が発生 7〜10Sv 全身に浴びると死亡 バックグランド 1mSv/年 国際放射線防護委員会(ICRP: International Commission on Radiological Protection)勧告に基づいて線量限度を決める 放射線業務従事者の場合 5年平均で20mSv以下(いずれかの1年間においても50mSvを超えないこと) 一般人の場合 1mSv/年(ただし医療によるものを含まない) 原子力防災対策 原子力災害対策特別措置法 重大事故にあたっては総理を本部長、経済産業大臣を副本部長とする原子力災害対策本部を設ける 現地対策本部の活動拠点として原子力施設からそれほど遠くない場所に常設のオフサイトセンターを設ける 経済産業省のもとに発足した原子力安全・保安院には緊急時対応センターが設けられ、各地のオフサイトセンターと専用の通信回線で情報を共有するシステムが出来あがっている 原子力防災体制 警戒段階 経済産業省に経済産業大臣を本部長とする原子力災害警戒本部が設けられる。(原子力施設の敷地境界で5μSv/毎時の放射線量が10分間継続して観測された場合、緊急事態に発展しそうな兆候がみられる場合) 緊急事態 敷地境界で500μSv/毎時の放射線量が10分間継続して観測された場合 原子力トラブル 原子力損害賠償法 原子力損害賠償制度 原子力損害賠償責任保険 原子力発電所の場合 一か所あたり600億円が上限 燃料加工施設の場合 一か所あたり120億円が上限 賠償に上限はないが、倒産した場合は被害者救済ができないため、こうした場合いは国が賠償の援助をする 国際事故評価尺度(INES: International Nuclear Event Scale) 国際原子力機関(IAEA: Intenational Atomic Energy Agency) レベル0〜レベル7