SEが知っておきたい会計の落し穴―困ったときにあなたを救う会計用語INDEX付 / 岩谷誠治

SEが知っておきたい会計の落し穴―困ったときにあなたを救う会計用語INDEX付

SEが知っておきたい会計の落し穴―困ったときにあなたを救う会計用語INDEX付

業務アプリ開発者にはすごく良い本だと思う。
20年前に読んでれば(出版されて無いけど)、あのシステムで無駄に怒られたりしなかったのに…、とか思いました。
(そのシステムはリリース後の火消しで入ってたので、設計したわけではないですが)
しかしAmazonの書評読むと難しいと書いてる人が何人かいらっしゃいますね。
業務アプリの開発に携わって会計のルールはこの3つしかない / 石川淳一, 松本武洋 - tmurataの日記辺り読んでれば分かると思うんだけどなぁ。
正直、ちょっと問題あると思います…。

ということで、以下は読みながら残したメモ。
特に俺以外に役に立つとも思えないし、著作権的にアレかも知れないけど、せっかくなのでさらしときます。

--------------------------
会計全般
--------------------------
管理会計 … 企業内部者
財務会計 … 外部利害関係者
  会計・財務会計 商法             収益・費用・利益
                 証券取引法
  税務会計       税法             益金・損金・所得

企業会計原則
  一般原則
    ・真実性の原則
    ・正規の簿記の原則
    ・重要性の原則
    ・資本取引・損益取引区分の原則
    ・明瞭性の原則
    ・継続性の原則
    ・保守主義(安全性)の原則
    ・単一性の原則
  損益計算書原則
  貸借対照表原則

  発生主義(≠現金主義)
  新システム導入時に継続性の元素kうを犯していないか?

損益計算書(P/L:Profilt and Loss Statement)
  一定期間内の利益(収益と費用の差額)を算出する
貸借対照表(B/S:Balance Sheet)
  資産(現金や商品等の財産のグループ), 負債(借入金のようにいつかは返さなければいけないグループ), 資本(自らが払い込んだ元手と商売の結果得られた設け分を合わせたもの)を並べたもの。右側に負債と資本(商売するのに必要なお金の調達方法・出所), 左側に資産(調達したお金がどのような形態をとっているか=資金の使い道・使途)を並べる。
  また資産は1年基準(one year rule)によって流動資産に固定資産として、上下に分ける
負債についても同様に流動負債と固定負債と読んで区別する
  通常の営業サイクルが1年を超える業種にういては1年基準に先だって正常営業循環基準という基準が適用され、回収までに1年を超えるものも通常の営業サイクル内の債権債務は流動資産・流動負債とする

仕訳・簿記
  簿記…仕訳のルール
  仕訳…取引の記録

会計の本質
・金額による記録
・財産目録と儲けの記録(B/S, P/L)
・取引を集計するための技術(仕訳・簿記といった記録方法)

資本の部の内訳項目は商法上の規定で定められている
  資本金・資本剰余金 … 株主から直接払い込まれた金額
  利益剰余金         … 事業活動で稼いだ利益見合いの金額

(営業による収益 - 営業による費用) = 営業利益
営業利益 + (営業以外による収益 - 営業以外による費用) = 経常利益
経常利益 + (特別な収益 - 特別な費用) = 税引前当期純利益

営業以外の活動=財務活動(資金の調達と運用の結果得られる損益)

営業損益項目
  収益 売上高
  費用 売上原価
         期首棚卸高 + 当期仕入高 - 期末棚卸高 = 売上原価
       販売費及び一般管理費(販管費)
  売上高 - 売上原価 = 売上総利益(粗利)
  売上総利益 - 販売費及び一般管理費 = 営業利益

営業外・特別損益項目
  営業外収益
    受取利息
    受取配当金
  営業外費用
    支払利息
    社債利息
  特別損益項目
    固定資産売却益, 固定資産売却損 等

利益処分計算書
  利益処分(商法上の手順により定義)
    利益処分案 → 株主総会 → 利益処分計算書
    配当金・役員賞与・準備金等への積立
    当期未処分利益・次期繰越利益・利益処分額(利益準備金(△)・配当金・役員賞与)

キャッシュ・フロー計算書(株式公開企業のみ)
  キャッシュ=現金及び現金同等物 (即換金可能な預金等を含む)
    現金
    普通預金, 当座預金, 通知預金
    満期日までの期間が三カ月以内の定期預金, 譲渡性預金等
  キャッシュ・フロー計算書の構造
    期首現金残高 +- 期中増減 =期末現金残高
    期中増減
      営業活動による増減
      投資活動による増減
      財務活動による増減
  直接法・間接法 … 営業活動による増減の内訳の表現方法(ほとんどは間接法を使用)
    直接法 … キャッシュの出入りを総額(Gross)で表示する
    間接法 … キャッシュ・フローの金額を収入と支出の差引(Net)で表示する

会計の公式
           左側(借方)      右側(貸方)
             資産・運用      負債・資本・収益
┌───┐┌───────┬──────┐
│貸    ││              │            │
│借    ││              │ 負債 60    │
│対    ││ 資産 100     │            │
│照    ││              │            │
│表    ││              ├──────┤
│(B/S) ││              │            │
│      ││              │ 資本 20    │
│      ││              ├──────┤ ←┐
│      ││              │            │   │この差が利益
├───┤├───────┤            │ ←┘
│損    ││              │            │
│益    ││              │            │
│計    ││ 費用 60      │ 収益 80    │
│算    ││              │            │
│書    ││              │            │
│(P/L) ││              │            │
└───┘└───────┴──────┘

勘定科目
補助科目(科目明細, 摘要コードとも呼ばれる)

伝票
  伝票番号/伝票日付/借方, 貸方勘定科目/金額/摘要 で構成される発生した取引の仕訳を記入して確認するために用いられる書類

--------------------------
一般会計
--------------------------
決算
  決められた期間の経営成績を確定させるために行われる一連の作業
月次/四半期/中間/年度決算がある。商法, 税法上は年度決算が必須。必要に応じて中間決算が必要となる。証券取引法(及び各取引所の規則)では四半期, 中間, 年度の決算が必須となる。

決算の手順
  期中取引の入力
    ↓
  (決算整理前)試算表
    ↓←───────実地棚卸
  決算整理 
    ↓
  元帳の締切
    ↓
  財務諸表の作成

決算整理仕訳
  決算の時のみ行われる仕訳。
  費用の見越・繰延, 減価償却費の計上, 各種引当金の計上, 棚卸資産の評価, 有価証券の評価等がある。会計システム上、この決算整理仕訳は通常月のデータとは区別して、特別の期間に計上・集計しておく。

引当金
  期末時点において以下の四つの要件を全て満たす事象がある場合は、その事象に対して引当金を計上する必要がある
  1. 将来の特定の費用又は損失
  2. その原因が当期以前の事象にある
  3. 発生可能性が高い
  4. 金額の合理的な見積もりが可能
  主要な引当金として貸倒引当金, 製品保証引当金, 退職給付引当金, 返品調整引当金, 賞与引当金等がある
  引当金を計上する際の借方の費用科目にはXX引当金繰入額という名称を用いる。貸方はXX引当金となる

費用の見越・繰延
  見越 … 当期に収益・費用が発生しているが現金の授受がない場合
    収益が発生しているが収入がない場合の仕訳(3月分の預金利息6,000円が4/1に預金口座に振り込まれた場合)
      3/31 未収収益 6,000 / 受取利息 6,000
      4/1  現預金   6,000 / 未収収益 6,000
    費用が発生しているが支出がない場合の仕訳(3月分のコピー機使用料5,000円の請求書が4/1に届き、4/25に預金口座から引き落とされた場合)
      3/31 リース料 5,000 / 未払費用 5,000
      4/25 未払費用 5,000 / 現預金   5,000
  繰延 … 当期に現金の授受はあるが、収益・費用が発生していない場合
    収入はあるが、収益は発生してない場合の仕訳(貸付金の貸付先から来期4月分の利息50,000円を3/25に現金で受け取った場合)
      3/25 現金     50,000 / 前受収益 50,000
      4/30 前受収益 50,000 / 受取利息 50,000
    支出はあるが、費用は発生してない場合の仕訳(オーナーからの請求書に基づき、4月分のビルの賃借料20,000円を3/25に払った場合)
      3/25 前払費用 20,000 / 現預金   20,000
      4/30 貸借料   20,000 / 前払費用 20,000

会計帳簿
  帳簿組織 … 証憑から財務諸表に至るまでの一連の会計帳簿の体系

    証憑 … 相手先から入手した請求書, 領収書等
    ↓
    会計伝票
    ↓
    仕訳帳 … 日々の取引毎に仕訳データが蓄積される。
    |
    ├───→ 補助元帳 … 得意先元帳, 仕入先元帳等。
    ↓
    総勘定元帳
    ↓
    試算表 … 総勘定元帳を科目毎に集計したもの(T/B: Trial Balance)
    ↓
    財務諸表

   主要簿 … 総勘定元帳 + 仕訳帳
   補助簿 … 補助元帳

   会計伝票           伝票No, 伝票日付, 借方勘定科目, 貸方勘定科目, 金額, 摘要
   仕訳データ         伝票No, 伝票日付, 明細行No, 勘定科目, 金額, 相手先
   仕訳帳(仕訳日記帳) 蓄積した仕訳データを伝票日付順, 伝票No順にソートして出力したもの
   総勘定元帳         仕訳データを勘定科目, 伝票日付の順番でソートして表示したもの
  ※ データ構造から考えると帳簿組織など意識しなくても整合性が取れる気がするが、現実のシステムは複数のサブシステムの集合体のため、仕訳の基礎データが一元的なレベルで揃っているわけではない

締め処理
  締め処理のスケジューリングは現場作業を知らずに決定することはできない。

本支店会計
  複数の事業所を独立した会計単位として、独自の貸借対照表を作成したい場合等。ERPパッケージの標準で実現できない機能の典型。
  本店勘定, 支店勘定という名前の特殊な勘定科目を使用する。
--------------------------
販売業務
--------------------------
業務
  与信管理
  受注     → 最適な形態で(口頭で済ますものから契約書を交わすものまで)
  在庫管理 → 注文請書
  出荷指示 → 出荷指示書
  出荷・売上計上 → 納品書, 物品受領書, 納品書(控), 売上伝票(出荷基準の場合)
  検収
  請求 → 請求期間/締め日 請求書
  回収 → 支払条件(支払日(サイト), 支払手段(現金, 銀行口座振込, 手形等) 領収書

売上の計上基準
  出荷基準 … 商品販売で一般的な計上基準
  検収基準 … 商品の引き渡しだけでなく基準, 精度を求められる、据付, 調整作業が必要な場合等
  時間基準 … 事務所の賃貸料や機器のリース料等、契約時点でなく契約期間の時の経過に応じて売上が認識される場合
  工事進行基準 … 建設業特有の売上計上基準。工事完成基準の逆。長期かつ大規模な工事について工事の進行状況に合わせて収益を計上する
    工事進行割合 = 期末時点の実際工事原価累計額 / 期末時点の見積総工事原価
    当期工事収益 = 工事対価の額 * 工事進行割合 - 前期までに計上した工事収益
    当期工事原価 = 期末時点の見積総工事原価 * 工事進行割合 - 前期までに計上した工事原価
    一般企業における勘定科目と建設業特有の勘定科目
      B/S関係 売掛金 → 完成工事未収入金
              仕掛金 → 未完成工事支出金
              前受金 → 未完成工事受入金
              買掛金 → 工事未払金
      P/L関係 売上高 → 完成工事高
              売上原価 → 完成工事原価

請求の締めとの関係
  売上計上と請求は会計上は異なる業務だが、消費税の端数処理を請求単位で行わなければならないなどの制約から、請求処理と売上計上を同時に行うケースが多い。
  締め日が月末日以外の場合、通常の月は請求書ベースで売上計上を行い、決算月だけは締め日から決算日までの売上高を別途集計して計上し、翌月初に同額を振り戻す方法などが取られる。
  一定期間の取引をまとめて請求する処理は日本独特の商習慣で、海外では取引毎(インボイス毎)に請求・決済が行われるのが一般的である。→ERPパッケージではギャップとなることが多い。分割請求、複数締め日、半金半手、等。

手形
  約束手形 … 手形を発行した人(振出人)と支払う人が同じ。受け取る人は受取人(名宛人)
  為替手形 … 手形を発行した人(振出人)と支払う人(支払人, 引受人)が異なる。受け取る人は受取人(指図人)

  会計上は受取手形(債権として入手), 支払手形(債務として発行)として処理する

  支払期日前の手形による決済
    裏書手形
    割引手形
    → どちらも振出人が決済できない場合は偶発債務が発生する


--------------------------
購買業務
--------------------------
業務
  発注 購買依頼書, 注文書
  検収 
  仕入計上(検収基準)
  請求確認
  支払
  実地棚卸

仕入の計上基準
   検収基準 受領日でなく検収日が計上日となる。
     ※下請代金支払遅延等防止法では支払期日は受領日を基準に計算するので注意

棚卸資産の取得価額
  購入した棚卸資産の取得価額は購入時の代価となる。購入価額には購入に係る付随費用(運賃や保険料など)を含めなければならない。ただし金額的に重要性のない(おおむね3%以内)の間接付随費用については、法人税法の通達に従って取得価額に含めないことも認められる

棚卸資産の評価方法と評価基準
  評価基準 期末時点における棚卸資産の評価額の基準。以下の二つが認められている
    原価法 取得価額を基準とする
    低価法 取得価額と時価のいずれか低い方を基準とする
  評価方法
    商品の現物の動きに合わせて、真実の取得原価の出入りを記録すること(取得原価主義)は不可能なため、ある仮定=評価方法に基づいて受払の計算を行う。
    1. 個別法
    2. 先入先出法
    3. 後入先出法
    4. 総平均法 一定期間の単価の平均値を用いる。(繰越残高金額+受入金額)/(繰越残高数量+受入数量)で求める。期間によって月次総平均法と年次総平均法がある。
    5. 移動平均法 商品の払出のつど平均単価を計算していく
    6. 最終仕入原価法 一番最後に仕入れた際の単価を期末在庫すべてに適用する。取得原価主義の原則と矛盾するため望ましくない。
    7. 売価還元法 売価での在庫集計金額に種類別に原価率を乗じて期末在庫金額を算出する。デパートやスーパーのような小売業で用いられる。

※継続性の変更に抵触しないように注意すること。

--------------------------
固定資産管理
--------------------------
業務
  購入依頼
  見積・発注
  検収
  資産計上
  請求・支払
  現品管理(除却及び売却)
  減価償却計算

固定資産の種類
  有形固定資産
  無形固定資産
  投資その他の資産

修繕費と資本的支出
  区分するためには会計知識を有する経験者の判断が必要

減価償却の要素
  ※本来、商法および証券取引法が求める減価償却と法人税法が定める減価償却の考えは異なるが、日本の会計慣行では税法の減価償却によって算出した金額を財務会計上の採用しているケースが一般的である
  取得価額/耐用年数/残存価額
  償却方法
    定額法 減価償却費 = (取得価額 - 残存価額) / 耐用年数
    定率法 減価償却費 = 未償却残高 * 償却率
  取得価額
  耐用年数
    会計理論上は使用状況、使用目的に合わせて会社が自主的に決定することになっているが、税務上では資産の種類別に耐用年数を定めており(法定耐用年数)、日本の多くの企業ではこちらに基づいて減価償却計算が行われている
  残存価額
    法人税法で有形固定資産については取得価額の10%, 無形固定資産については取得価額の0%と定められている。
  償却可能限度額
    有形減価償却資産については取得価額の95%まで償却可能。残存価額の10%と矛盾しているが、税法改正の際に追加された概念。実務では耐用年数を超えた後、この価額まで償却計算を行う

少額資産
  10万円以上20万円未満の資産については、事業年度ごとに一括して(その年度に購入したものは耐用年数にかかわらず)3年間で償却することが可能。この資産を一括償却資産と呼ぶ。会計処理には以下の2種類の方法がある
  決算調整方式 会計上資産に計上して3年間で償却する
  申告調整方式 会計上は支出時に費用として処理するが、償却残額分を税務申告書上で加算する

建設仮勘定
  決算期末において完成・引渡が済んでいない物件に対する支出。固定資産が完成し引き渡された時に、正式な勘定へ振替処理を行う。

減損会計
  経済環境の変化等により、投下資本の回収が危ぶまれことが分かった時に、投資の回収可能額まで帳簿価額を減ずることにより、その時点での損失を認識する手法。
  ※減損会計で計上された減損損失は税務上の損金として認められない。このため減損処理以降の減価償却は会計上のものと税務上のものを二重に計算・管理する必要がある
  減損会計の手順
    資産のグルーピング
    減損の兆候
    減損損失の認識
    減損損失の測定 [帳簿価格 - 回収可能額(賞味売却可能額と使用価値の高い方)]
    減損の摘要

--------------------------
原価計算
--------------------------
配賦 発生した費用をその原因に対して案分する手続き
原価計算の手順
  費目(勘定項目)別計算
    -------
    材料費
    労務費
    経費
    -------
    直接費
    間接費
    -------
  部門別計算
    製造部門
    補助部門 補助部門で発生した原価を製造部門に配賦する
  製品別計算
    直接費は製品ごとに負担させる(賦課または直課)。間接費は製造部門で各製品別に配賦計算を行う

仕掛品
  決算期末時点において、製造ラインに投入されたが完成に至っていない状態の在庫。各工程毎に発生するため進捗度を考慮して評価を行う必要あり。
  原価計算が行われていないと仕掛品の金額を算定できない。

製造原価報告書
  原価計算の結果は損益計算書上は当期製造原価(又は売上原価)という科目1本で表示されしまうため、内訳を表すために別途添付する製品製造原価の明細。
  製造原価報告書の当期製品製造原価 = 損益計算書の当期製品製造原価
  他勘定振替 製造原価として投入されたものが、自社消耗品として消費したり、研究開発や広告宣伝に使用(他の費目へ流用)したもの。この科目を経た後、消耗品費, 研究開発費, 広告宣伝費などの経費科目で処理される

--------------------------
人事・給与
--------------------------
業務
  人材管理
    人事記録の管理
    教育研修
    人事考課
    人事計画
    採用業務
    福利厚生
  勤怠管理
    実時間管理
    休暇管理
  給与計算
報酬の種類
  給料
  賞与
  退職金 退職給付に係る会計基準に従って退職給付引当金を計上する
    退職一時金制度
    企業年金制度
    退職一時金+企業年金
給与の控除項目
  法定控除項目
    健康保険料
    厚生年金保険料
    雇用保険料
    介護保険料
    住民税
    所得税
  協定控除項目
    社宅使用料
    財形貯蓄
    生命保険料
    労働組合費 等

社会保険
  社会保険(広義)
    ├─ 社会保険(狭義) ─┬─ 健康保険     原則として事業主、被保険者の折半
    │                    ├─ 厚生年金保険 〃
    │                    └─ 介護保険     〃
    └─ 労働保険 ─┬─ 雇用保険           業種によって異なる
                    └─ 労災保険           全額事業主負担

  社会保険料(狭義)の算出
    標準報酬月額を標準報酬月額保険料額表のテーブルに当てはめて求める
    満40歳以上は介護保険も徴収される
    総報酬制が導入されたため賞与からも社会保険料が徴収される
  定時決定
    4, 5, 6月に実際に支払われた報酬額の平均額を報酬月額とみなす。
  月額変更
    以前の標準報酬月額と2等級以上の差が生じた場合に、随時改訂の手続きを行うこと
労働保険
  労働保険料の算出
    4/1〜翌3/31までの間に従業員に支払った賃金総額に対して、業種毎に定められた料率を乗じて算出する
  年度更新
    労働保険は1年間の保険料の概算金額を一括(または分納)で前払いし、年度が終わった時点で確定保険料との差額を精算する方式をとっている。

所得税・住民税
  控除所得税額の算出
    都度の支払金額をもとにして所得税の源泉徴収税額票(月額表)と賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表から算出する。この時、給与所得等の扶養控除申告書を提出している場合は甲欄を、提出していない場合は乙欄を使用する。
  年末調整
  住民税
    普通徴収 従業員が直接納付する
    特別徴収 会社が厳選する。年末調整によって確定した給与所得の金額を給与支払報告書として従業員の済んでいる市町村へ送付し、各市町村ではそれを基に税額を計算して、特別徴収税額通知書を会社へ送付する

--------------------------
経費管理
--------------------------
業務(例:旅費精算)
  出張申請
  仮払承認
  出張・出張精算
  経理承認
  支払
経費の種類と消費税
  販売費及び一般管理費と消費税
    給料手当 不課税
    賞与 不課税
    退職金 不課税
    役員報酬 不課税
    通信費 課税(国際電話は免税取引)
    旅費交通費 課税(海外出張旅費は課税対象外)
    法定福利費 非課税
    福利厚生費 混在
    荷造運搬費 課税(国際輸送や保険料は課税対象外)
    水道光熱費 課税
    消耗品費 課税
    新聞図書費 課税
    広告宣伝費 課税
    貸借料 課税(地代や住宅用家賃は非課税)
    保険料 非課税
    減価償却費 不課税
    各種引当金繰入額 不課税
    修繕費 課税
    支払手数料 課税
    会費 混在
    交際費 混在
    租税公課 不課税
    雑費 混在
源泉徴収
  源泉徴収の対象となる経費(支出)  報酬・料金等に対する支出で相手が法人でない個人の場合
  預かった源泉徴収税額は支払った月の翌月10日までに納付する
  源泉徴収税額算出は、原則として消費税額を含んだ税込報酬金額が基準となるが、請求書等において報酬額と消費税等の額が区分されている場合には消費税を除いた金額で計算することも認められている
  源泉対象となった報酬については年末に支払調書の作成が必要

--------------------------
資金管理
--------------------------
資金収支管理
  1年間の資金計画→月次ベースの資金繰り表→日次ベースによる口座の残高管理作業
  (システム的な対応より担当者の職人的技術に依拠しているケースが一般的)
資金の現物管理
  管理対象
    現金 現金出納帳で管理(現金と残高の照合)
    預金 預金口座別の出納帳で管理(銀行からの残高確認書と出納帳の残高との照合)
    受取手形 手形記入帳で管理(現物と残高の照合)
    有価証券 有価証券台帳で管理(株式は証券会社へ。その他(社債等)は現物と残高の照合)
    小切手帳 小切手は全て線引き。小切手作成者と署名捺印者を分ける。小切手帳発行控への正確な記入
    手形帳 支払手形台帳で管理。手形作成者と署名捺印者を分ける。手形帳発行控への正確な記入
資金調達と運用業務
  資金調達
    銀行借入
    株式発行
    社債発行
    ファクタリング 自社の売掛債権をファクタリング会社に譲渡することによって資金調達する方法
  余資の運用 社内規定に従って、許容された投資対象, 取引限度額の中で行う。損切り(ロス・カット)については限度額を規定以上明確にしておくことが望ましい
CMS(Cash Management System)
  資金の集中を目指す場合、単一企業だけでなくグループ企業全体に広げた法が効果的。親会社や別途設立した金融統括会社で集中して行う。
  プーリング グループ企業の資金を親会社ないしは金融統括会社で集中して管理する。あらかじめ各グループ企業の必要資金残高を設定しておく。一定のサイクルで残高をチェックし、過剰な場合は親会社の口座へ吸い上げ、不足している場合は資金の供給を行う。グループ企業間で資金調達を行う。金融機関からの調達窓口を一本化することによって調達コストも削減できる。
  ネッティング
    グループ会社相互間の債権・債務を相殺し、相殺後の金額だけを(親会社ないしは金融統括会社を通して?)決済する。
  支払代行
    企業グループの支払業務を親会社(ないしは金融統括会社)が集中して行う
※キャッシュ・フロー計算書は、あくまで財務報告用資料であり、日常の資金繰り業務に使われる資料とは異なる

--------------------------
管理会計
--------------------------
経営目標
経営計画
  単年度事業計画 1年の経営計画
  中期経営計画 3-5年の経営計画
  長期経営計画 5-10年の経営計画
  近年は経済環境の変化が激しく長期計画の前提を見積もることが困難なため中長期計画として3年程度で考える企業が増えている
予算作成
  割当予算 トップダウン
  積上予算 ボトムアップ
  実務上は折衷的な方法で予算編成が行われる
  予算作成手順
    経営者が中長期計画に沿った予算編成方針を発案する
    取りまとめ部署(企画部・経理部等)がさらに具体的な予算編成方針として整理する
    予算編成方針が経営者または経営会議で承認・決定される
    取りまとめ部署から各部門へ目標の大枠を提示し、予算作成を依頼する
    各部門が作成した予算案を取りまとめ部門と調整(全体の予算編成方針と整合するまで)
    取りまとめ部署は出そろった予算案から全社的な総合予算案を編成
    経営者または経営会議で総合予算案を承認・決定する
    行動目標として各部門へ示達される
    以降は毎月の実績値と比較・検討が続けられる
※予算制度は管理会計領域の業務のため、法的な制約をうけるものではないが、近年、連結財務諸表におけるセグメント情報や減損会計における資産のグルーピングといった局面で財務会計にも影響を与える点があるので注意が必要

勘定科目
  会計システムは勘定科目(補助科目を含む)がデータの集計単位の基本となるが、財務会計制度と予算制度(管理会計)で予算科目のメッシュが異なるため、勘定科目の設定時には注意が必要となる。

共通費配賦
  本社費・共通費 事業部制の組織の場合、事業部から独立した本社部門, 経理部, 人事部のように各事業部へ共通してサービスを提供する部門の費用。

--------------------------
新しい会計の流れ
--------------------------
強制法規による連結経営     ─┬─→ 組織再編に対応するための新しい経営管理手法
自由意思による企業組織再編 ─┘

連結財務諸表
  1. 連結貸借対照表
  2. 連結損益計算書
  3. 連結剰余金計算書
  4. 連結キャッシュ・フロー計算書
  1., 2., 4.については個別の決算書と同様。3.については注意が必要

  連結剰余金計算書
    作成方式
      確定方式 連結会計期間中に各グループ会社で開催された株主総会で確定した利益処分(前年度の利益処分の金額)を対象。ほとんどの企業が採用
      繰上方式 連結会計期間中の利益に係る処分を対象

連結の範囲
  親会社
  子会社 
    1. 議決権の過半数を実質的に所有している会社
    2. 議決権が50%以下であっても高い比率の議決権を有しており、実質的に支配している会社(支配力基準)
  関連会社
    1. 議決権の20%以上を実質的に所有している会社(子会社を除く)
    2. 議決権の15%以上20%未満を所有し、かつ経営に重要な影響を与えることができる会社(影響力基準)

  原則として、全ての子会社を連結の範囲に含めなければならないが、小規模で重要性が認められない会社については除くことができる
  連結の範囲から除いた非連結子会社と関連会社の成果は持分法によって連結財務諸表に反映させる。持分法の対象会社の重要性が認められないもについては除くことが可能。

連結と持分法
  連結 子会社の財務諸表のすべてを合計してから、関係会社間の取引を相殺・消去していくアプローチ。全ての決算書を合計した後、連結修正仕訳と呼ばれる連結特有の仕訳を行う。
    連結修正仕訳
      投資と資本の相殺消去
      債権・債務の相殺消去
      取引高の相殺消去
      未実現損益の消去

  持分法 関連会社の利益のうち、グループの持分相当額を投資勘定の増加として取り込む。持分法の連結仕訳は一行で完結するので一行連結(One-line Consolidation)と呼ばれる

企業組織再編
                           所有者への対価 再編手法名
           ┌ 事業の分離       ┬ 現金 ┬ 株式譲渡
           │                  │      └ 営業譲渡
  所有事業 ┤                  └ 株式 ┬ 現物出資
           │                          └ 会社分割 ┬ 新設分割 ┬ 分社型新設分割
           │                                      │          └ 分割型新設分割
           │                                      └ 吸収分割 ┬ 分社型吸収分割
           │                                                  └ 分割型吸収分割
           │
           └ 事業の再編(統合) ─ 株式 ┬ 合併     新設合併・吸収合併
                                       ├ 株式交換 ある会社を完全子会社化する
                                       └ 株式移転 100%親会社を設立する
  分割 承継会社
       新設分割 承継会社が新しく設立される
       吸収分割 承継会社が既存の会社
       分社型分割(物的分割) 承継カ社が発行する株式の割当先が分割会社自体。
       分割型分割(人的分割) 承継カ社が発行する株式の割当先が分割会社の株主。
  合併 存続会社

連結納税
  100%の資本関係があるグループ会社間の所得については損益の通算を認める。
  採用した場合は原則として取り止めることはできない。
  持ち株会社100%の子会社以外は認められない。
  持ち株会社100%の子会社は規模の大小にかかわらず全て含む必要がある。
  ※税法上の仕組みなので、証券取引法の連結財務諸表とは何の関連もない。

BSC(BalancedScorecard)
  Robert Kaplan / David Nortonが提唱した経営管理手法
  以下の四つの視点から複合的に目標を設定・管理する
    財務の視点
    顧客の視点
    学習と成長の視点
    内部プロセスの視点
  戦略マップ
    戦略上の目標とそれを象徴的に表す重要業績評価指数(KPI:Key Performance Indicator)の関係を図示し、四つの視点からみた漏れ、重複、矛盾の有無を確認する
    KPIの例
      財務
        ROE(株主資本利益率)
        ROI(投下資本利益率)
        EVA(経済付加価値)
        売上高
        当期純利益
      顧客
        顧客満足度
        来店者数
        顧客当たり売上高
        来店者購買率
        市場シェア
      内部プロセス
        不良品発生率
        納期遵守率
        1人当たり販管費
        欠品率
        在庫回転率
      学習と成長
        従業員満足度
        退職率
        1人当たり売上高
        提案件数
        情報化投資額

EVA(Economic Value Added: 経済付加価値)
  スタンスチュアート社が提唱する経営指標。(スタンスチュアート社の登録商標)
  類似の指標SVA, エコノミック・プロフィットがある(基本的な考え方は同じ)
  EVA = 税引後営業利益 - 資本コスト 
      = 税引後営業利益 - 加重平均資本コスト率 * 投下資本

  資本 (総)資本/株主資本の2つの意味がある。資本コストは(総)資本コストのこと。
  (総)資産コスト お金を調達して使用していることに対してかかる費用。
      (総)資本コスト = 負債コスト + 株主資本コスト
      負債コストは借入金でお金を調達している場合に支払う利息。負債の利子率を負債コスト率とすると
      (総)資本コスト = 負債残高 * 負債コスト率 + 株主資本残高 * 株主資本コスト率
      株主資本コスト率は配当金よりも広い概念で、投資家が株式に対して抱く期待収益率から求められる計算上の金額。
      株主資本コスト率 = リスクのない国際の利率 + リスクプレミア率
  実際の計算過程では負債コスト率と株主資本コスト率の加重平均値を用いる。この加重平均資本コスト率をWACC(WeightedAverageCostOfCapital)と呼ぶ。
  EVA計算では税金も費用と考え、営業利益から税金を控除した税引後営業利益の金額を基礎とする。この税引後営業利益はNet Operating Profit After Taxを略してNOPATと呼ばれる
  株主が期待する収益率を上回った利益部分が真実の利益、企業価値を増加させた金額となる。
  EVAを導入する場合は、自社にあった算出式を適用する必要がある。理論的に精緻化していくと、普段使っている貸借対照表や損益計算書と関連のない数値となり利用者にとって分かりにくいものになってしまうため、精緻化と分かりやすさのバランスのとれた式が自社にあった算出式となる。