平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学 / M.Scott Peck著

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学

著者は「悪」というものを病気と捉え、それを取り扱う科学として「悪の心理学」というものを考えています。そして「悪」「邪悪な人」をの定義として

  • 完全性という自己像を守るために、他人を犠牲にすること
  • 怠惰なこと(「当然の苦しみ」を逃れること)
  • 自己愛(ナルシシズム)

をあげています。著者自身は本書を読んでいる限りでは誠実な人であり、

  • 顕著な心理的障害はすべて「過剰表現」(多重規定)

とはしていますが、大変危険な本だと思います。
なんとなくイヤなヤツだと思ってるタイプの人間について、はっきり言葉をあたえて定義しているのはおもしろいと思いますし、集団の悪という章もイロイロと考えさせられる内容です。
しかし実際にこの本にあげられているような人間は周りにいますし、自分自身にもそういう傾向はないとは言えないことを考えると、この本で定義しているような悪の科学が成立し、これを道具として使用されると誰でも病気として扱うことが可能になり、大変危険な香りがします。(著者自身もそのことは危惧していますが、そうはならないだろうと予想しています。)
という感じで、読み物としてはおもしろいのですが、キリスト教系のトンデモな本なのかなぁ、と正直思いました。