累犯障害者 / 山本譲司

累犯障害者 (新潮文庫)

累犯障害者 (新潮文庫)

本のタイトルは累犯障害者とセンセーショナルですが、累犯障害者ばかりをとりあげている訳ではありません。世の中には福祉と切り離された障害者がたくさんいて、実は刑務所がそういう人々の最後のセーフティーネットとなっている、という現実が記されています。
目次は以下のとおりです。

序章 安住の地は刑務所だった − 下関駅放火事件
第一章 レッサーパンダ帽の男 − 浅草・女子短大生刺殺事件
第二章 障害者を食い物にする人々 − 宇都宮・誤認逮捕事件
第三章 生きがいはセックス − 売春する知的障害女性たち
第四章 ある知的障害女性の青春 − 障害者を利用する偽装結婚の実態
第五章 多重人格という檻 − 性的虐待が生む情緒障害者たち
第六章 閉鎖社会の犯罪 − 浜松・ろうあ者不倫殺人事件
第七章 ろうあ者暴力団 − 「仲間」を狙いうちする障害者たち
終章 行き着く先はどこに − 福祉・刑務所・裁判所の問題点

読み進めていくと、知らなかったこともたくさんありました。
知的障害者の多くが身元引受人がいないため仮出所もなく、また微罪でも服役しなければならない状況にあること。
出所しても行き先がないため、刑務所に戻るために再犯する人がいること。
聾唖者の手話と健常者の手話が違っていること。
治療の必要がない知的障害者を精神病院に隔離して必要のない薬を投与し続けていること。
等々。
若干、煽り過ぎじゃないのか?と感じる部分もありますが、それ以上の現実もあるのでしょう。
しかしこれを読んで、自分自身に何が出来るのか?どうすれば良いのか?という部分は難しいものがあります。虞犯・累犯となってしまう構造は福祉から外れた障害者に限った話でなく、家賃を払えなくて家を追い出されたら、自分自身にも容易に起こり得る話ですし、障害者福祉に限らずに、セーフティーネット全般について、もっと真剣に考える必要はあるのですが…。
なかなか答えは出ませんね。これからも考え続けるしかないのでしょう。